現在、日本には2300万人の慢性痛患者がいると推定されますが、その85%の方は整形外科や整体院を巡っても痛みの原因すら解らず長期にわたって悩まされ続け、そればかりか全く必要のない手術を受けて人生を暗転させてしまう方も少なくありません。
医学が目覚ましい発達を遂げる中で、何故、痛みやしびれ等が治らないのでしょうか?
それは、我が国おいては、身体の痛みやしびれの原因を根本的に間違えているからです。
身体の痛みやしびれのほとんどは、筋肉や筋膜に生じたしこり(トリガーポイント)が起こす「筋筋膜性疼痛症候群」です。これが世界の常識であって、日本の非常識、だから腰痛も肩凝りも頭痛も治療できないのです。
世界的には、1983年に米国のケネディ大統領とジョンソン大統領の主治医を勤めたトラベル博士が中心となって、身体的には「筋筋膜性疼痛症候群(トリガーポイント)」による「筋痛」が痛みの95%を占め、残りの5%は「骨折」「ガン」などによる痛みであることを膨大な臨床データに基づき解明しているのです。

トリガーポイントマニュアル

痛みやしびれを起こす本当の原因を知れば、ほとんどの痛みやしびれ等は簡単に治せるのです。以下の内容をご覧頂ければ、痛みの本当の姿が見えてきます。

目次

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1  痛み治療の現状


2  痛みの常識の嘘

3 痛みの正体

1 痛み治療の現状


【グラフ】日本国民の愁訴

上記は、厚生統計協会の調査報告「国民衛生の動向・厚生の指標(1987年~2015年)」です。医療技術は日々目覚ましい発展を遂げているにも関わらず、慢性痛患者は増え続けています。
これは、現代医学や整体等の代替医療が、腰痛や肩こり等の慢性痛に対応できていないことを示しています。
痛みやしびれの治療は、筋肉や筋膜などの柔らかい組織の障害を如何に取り除くかが決定的に重要であるのに、整形外科をはじめとする我が国の医学界では「痛みの原因は、脊椎や腰椎などの筋骨格系の異常にある。」(損傷モデル)とする誤った理論に固執して筋肉や筋膜の勉強すらせず、その結果、誤診や不要な手術を延々と繰り返しているのです。
真に恐ろしいことであり、患者自らが真実を知って身を守る必要があります。
身体の痛みやしびれのほとんどは、筋肉や筋膜に生じたしこり(トリガーポイント)が起こす「筋筋膜性疼痛」であり治療が可能である、それが世界の常識です。

2 痛みの常識の嘘

2-1 腰痛は老化現象?

【グラフ】骨の変性と腰痛

上表の棒グラフは「椎間狭小と骨棘形成の保有率」を表しており、年齢と共に骨の変性が増加することを示しています。
他方、折れ線グラフは「腰痛の初発年齢と保有率」を表しており、ともに30代をピークとして年齢とともに減少しています。
骨の変性は年齢とともに増加する老化現象と言えますが、 腰痛等の慢性痛は骨の変性とも老化とも無関係 であることが解ります。
これまでに腰痛は老化現象の一つとされてきた常識は誤っているのです。
「もう歳だから」と諦める必要など何処にもありません、慢性痛は治るのです。

2-2 脊椎・骨盤の異常が腰痛の原因?

【表】脊椎異常ー腰痛

上表は、急性腰痛、腰痛患者、健常者のグループに区分して、脊椎・骨盤に異常のある人の比率を調査したものですが、各グループの間に有意の差はありませんし、青字で示した脊椎すべり症などは却って健常者に多く見られます。
脊椎・骨盤の異常と腰痛の間には、何ら因果関係は認めらません。
これまでに脊椎や骨盤の異常が腰痛の原因とされてきた常識は誤っているのです。
腰痛だけではありません、骨に多少の変性があっても全く気にしないで下さい。慢性痛は治ります。
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2-3 椎間板ヘルニア等が腰痛の原因?

【グラフ】椎間板の異常

上表は、腰痛のない人に見られるヘルニア及び椎間板変性の比率を表しています。
腰痛のない人でも76%にヘルニアが見つかり、85%に椎間板変性が発見されます。そのタイプも腰痛の人との間に違いはありません。
ヘルニアや椎間板変性があっても腰痛を起こすことはありません。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が腰痛の原因だとされてきた常識は間違っているのです。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されても、ほとんどの場合手術の必要はありません。腰痛は治ります。
<参考>
「腰痛治療のために腰椎固定手術を行った患者約700名のうち、驚くことにこの64%は術後1年以上経過しても依然として休職のままであり、術後復職して1年間継続して勤務した人は僅か6%しかいなかった。」
米国の治療報告(2006年)

ヘルニア手術の成功率_凛ちゃん

2-4 骨盤の歪みが腰痛の原因?

健常者と腰痛患者おのおの約150名を対象として、姿勢ごとの骨盤の歪みを厳密に測定して、腰痛との関連を調査した結果が報告されています。(Levangie PK、Spine、1999年)
その調査の結果、 骨盤の非対称性と腰痛とは、どのような臨床的意義においても関連がありませんでした。

【調査結果】骨盤-腰痛

人間は機械ではなく生物である以上、身体に構造上の違いがあっても何も不思議なことではありません。
骨盤が歪んでいると腰痛になるという常識も間違っているのです。

2-5 腰痛の改善には安静が必要?

【グラフ】ぎっくり腰の回復度合い

上図は、 急性腰痛、いわゆるぎっくり腰の患者約200名を対象に、「2日間の安静臥床」、「ストレッチを実施」、「耐えられる範囲内で日常生活を続ける」の3つグループに無作為に割り付け、回復の度合いを追跡調査した結果です。
最も回復が早かったのは「日常生活群」のグループであり、最も回復が遅かったのは「安静臥床」のグループでした。
これから解るように、腰痛は安静にして治す、あるいはコルセット等で固定して治すとされてきた常識は間違っているのです。これは、腰痛以外の慢性痛でも同じことが言えます。
腰痛等の痛みの原因が骨格や神経の異常にあるとするから安静にするという間違った発想が生まれるのですが、 痛みの原因は筋肉にありますから安静にするのは逆効果 になります。
慢性痛は、できるだけ普段通りの生活を送りながら治していけるのです。

<参考>
骨折の治療でギブスをしていると瞬く間に筋肉が萎縮して細く痩せ筋力が低下してしまうのをご存じでしょう。筋肉は使わなければ萎縮します。
椎間板は、動かすことによってスポンジが水を吸うように水分や影響分を吸収します。
動かなければ水分や栄養分が吸収できずに柔軟性をなくしていきます。
関節内では関節軟骨がクッションや潤滑の働きをしていますが、関節が動くことによって関節軟骨に酸素や栄養物質がしみ込んでいきます。関節をギプスなどで長期間固定すれば、関節軟骨に酸素や栄養物質が供給されずに萎縮してしまいます。
筋肉も関節も動かさなければ萎縮し、必要な機能が低下してしまうのです。
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2-6 腰痛の改善には筋肉強化?

段階的かつ適切に強化された筋肉は、負荷に強く問題を起こしにくいし、逆に 障害のある筋肉を鍛えようとすれば却って悪化する ことは、スポーツや肉体労働に従事するものにとっては極めて常識的な感覚です。
逆に、筋肉の障害を取り除けば、痛みは解消し柔軟性や筋力は自然且つ速やかに回復するものです。
骨格や神経の異常が痛みの原因だと間違って認識しているから、脊椎等を支えるために周辺の筋力を強化する必要があると考えがちですが、痛みの原因そのものが筋肉にある訳ですから、その考え方は最初から間違っています。筋肉が障害を受けて痛みを起こしているのですから、その障害から回復する以前に筋肉に更に過度の負荷をかけて良い訳がありません。
筋肉強化は腰痛の予防や健康維持には有益ですが、筋肉を鍛えれば腰痛が治るという常識もまた間違っているのです。
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2-7 画像診断で腰痛の原因が解る?

画像診断

筋骨格系疾患の85%以上は、症状とMRI等による画像診断の結果が一致せず明確な診断を下すことができないのが実情です。 ヨーロッパの腰痛治療ガイドライン(2004年)では、「よほど重度の疾患がある腰痛でない限り、 むやみに画像をとってはならない。」としています。
画像診断では腰痛の原因は解らないから、癌に侵されているような重度の疾患を除いて、無用な画像診断を撮って患者を不安にさせてはならないということです。

腰痛診療ガイドライン

また、 日本整形外科学会と日本腰痛学会は 2014年12月に腰痛診療ガイドライン(指針)をまとめましたが、「腰痛患者に対してX線撮影を全例に行うことは必ずしも必要ではない(GradeA)」と慎重な表現ではありますが、 画像検査の結果を腰痛の原因にしてきたことの誤りを認めているのです。
画像診断で多少の骨の変性があっても恐れないで下さい、慢性痛の本当の原因はそんなところにはありません。

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2-8 膝、肩、肘等の痛みの常識は?

膝や肩や肘が痛むと、「加齢や使い過ぎによって関節の軟骨がすり減って痛みが生じる。」と言われることがありますが、 加齢や使い過ぎで軟骨が減ることはありません。
また、軟骨には痛みを感じるセンサー自体が存在せず、 軟骨がすり減る時に痛みを感じることもあり得ません。
膝の半月板は、60歳以上になると4割以上の人が損傷しています。
肩の腱板についても、50歳代では4人に1人、65歳以上ではほぼ半数が断裂しています。
しかし、この方達は膝の半月板や肩の腱板が損傷していても何ら痛みを訴えることなく、元気に活動しておられます。
膝、肩、肘等の痛みもほとんどは筋肉が原因であり、関節の問題ではないのです。

<参考>
三段跳びの世界チャンピオン、83歳の田中重治氏の膝関節をX線で検査した結果、大学生と比較しても膝関節の軟骨の量にほとんど差はなかった。
軟骨の量が減るのは、加齢や運動によってすり減るのではなく、軟骨細胞が酸素を得られず死ぬからである。(NHKためしてガッテンより)

<参考>
「膝関節の軟骨には、血管も神経も無いので、これがすり減る時に痛みは感じません。」(聖路加国際病院整形外科部長 星川吉光)
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3 痛みの正体

「痛みの常識の嘘」において、痛みが誤解されていることを理解頂けたと思います。
では、何故、痛みはこれほどまでに誤解されて来たのでしょうか。
私たちはどのように痛みを感じるのかを簡単にお伝えした上で、痛みが誤解されてきた根本的な原因をお話したいと思います。

3-1痛みを感じるのは筋肉である

刃物等で怪我をした場合に痛みを感じますが、刃物等が神経を刺激して痛みを起こしているのではありません。
刃物等で組織が壊れると発痛物質が生成され、神経末端にある受容体と結合して痛みを起こし、それが電気信号に変換され神経を介して脳に送られて「痛み」として認識されることになります。
痛みを捉える受容体のほとんどは筋肉や皮膚にあります。他方、 骨本体、軟骨、毛、爪、神経自体には受容体はなく損傷したとしても痛みは感じません。
例えば、椎間板は年齢とともに減少しますが、受容体自体が存在しないのですから痛みを感じることはありません。座骨神経痛、肋間神経痛など神経痛という言葉がありますが、 神経自体には受容体はなく神経の途中で痛みを感じることはありません。
同じように、関節内の軟骨がすり減っても、軟骨には受容体がありませんから痛みを感じることができません。そして、皮膚の痛みによる中枢神経の興奮はすぐに鎮まりますが、筋肉の痛みによる中枢神経の興奮は10倍以上長引き慢性化し易いのです。
筋肉の痛みに着目しない痛み治療などは、本質的に有り得ないのです。
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3-2神経を圧迫しても痛みは生じない

受容体で捉えられた痛みは、神経を介して電気信号として脳に伝達されます。
簡単に言えば、電線によって電気信号が伝達されていると考えれば良いのですが、電気スタンドのコードを圧迫あるいは切断すると明かりは消えますが、電気スタンドに新たに明かりが灯ることはあり得ません。
同じように、 神経を圧迫あるいは切断したとしても、感覚が消失することがあっても神経細胞の途中で痛みが発生し感知されることはあり得ないのです。

<参考>
椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されても、腰や臀部や脚に痛みが生じること自体があり得ないし、そもそもヘルニアは神経よりも柔らかく果たして圧迫自体が起こるか否かも疑問です。
神経は非常に強いものですから、全体重をかけて飛び降りても足の裏にある神経を圧迫して痛みを生じたという経験はない筈です。
脊柱から神経がでる部分を神経根といい、神経根が椎間板等によって腹側から圧迫されると椎間板ヘルニア、神経根が骨によって背側から圧迫されると脊柱管狭窄症、座骨神経が圧迫されると座骨神経痛、これらは神経の「圧迫」によって痛みを生じると一般的に説明されていますが、生理学的に明らかに矛盾しているのです。
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3-3痛む場所に痛みの原因はない

心臓等の内臓からの痛み信号が離れた皮膚の痛みとして感じられることがあり、これを関連痛といいます。
この原因は、内臓からの情報と皮膚からの情報が脊髄中の同じニューロンに入っている場合が多く、それらの情報が一緒に脳に伝えらることにあると考えられています。脳では、信号の質ではなく信号が入ってくる経路によって痛みの部位を判別しており、心臓が悪くても腕や胸が痛い、胃が悪くても背中が痛いという症候を呈することになります。
痛みの大部分は筋肉が起こしていますが、 筋肉も同様に様々な部位に関連痛を起こします。
例えば腰痛であっても、その原因は背部にあるのではなく、腸腰筋などの腹部等の筋肉のトリガーポイントの起こす関連痛である場合のほうが多く、痛む部位を手当てしても痛みは消えません。

腸腰筋が起こす痛み・しびれ

<腸腰筋>
・ 腰痛の主因
・ 起立時に痛みが増大、横臥時に軽くしつこい痛み
・ 活性化すると起き上がり腹筋運動が不可能
・ 時に、椅子に深く座った状態からの立ち上がりに困難
・ 朝、股関節か鼠径部にこわばり感や腰痛があり真っ直ぐ立てない
・ 活性化すると、時に、排便時の痛み
・ 代表的な体幹筋であり、全身的な症状の根本原因にあることが多い

    凡例  ×:トリガーポイントの位置  赤色:関連痛・しびれの部位
       『Myofascial Pain Dysfunction The Trigger Point Manual』
                            左には同時に生じる様々な症状の一例を示しています。

このように筋肉の起こす痛みが理解されない上に、痛いところに痛みの原因はないことから痛みの原因を見出すことができず、画像検査で確認された微々たる個人差を痛みの犯人にしてしまう。
これが、痛みに関する誤った常識を生み出す大きな原因になっているのです。

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3-4痛みの原因はトリガーポイント

トリガーポイントマニュアル

身体の痛みのほとんどは、筋肉や筋膜に生じたしこり(トリガーポイント)が起こす痛み、すなわち「筋筋膜性疼痛症候群」です。これが世界の常識であって、日本の非常識なのです。
1983年に米国のケネディ大統領とジョンソン大統領の主治医を勤めたトラベル博士が中心となって、身体的には、「筋筋膜性等痛症候群(トリガーポイント)」による「筋痛」が痛みの95%を占め、残りの5%は「骨折」「ガン」などによる痛みであることを膨大な臨床データに基づき解明しているのです。

当時はトリガーポイントの発生原因が科学的に実証されていないこともあって、医学界は「痛みの原因は骨や関節の異常にある。」として筋筋膜性疼痛症候群(MPS)に真剣に取り組んできませんでした。
しかし、現在は、筋電図や超音波画像によってトリガーポイントが客観的に確認され、関連痛パターンも把握されてきたため、トリガーポイント治療は徐々に広がりを見せるとともに治療効果は飛躍的に向上しつつあります。
トリガーポイントの観点から、身体の慢性的な痛みやしびれ等のほとんどは原因を特定できると言って過言ではありません。
トリガーポイントについては、「トリガーポイントの生理学」で詳しく説明しております

<参考>
ペインクリニックで診断される症状のうち93%の痛みがトリガーポイントに関連しており、85%の痛みがトリガーポイントだけに起因している。(1999年:Genin、1995年:Fishbain)

<参考>
ケネディ大統領ケネディ大統領は、トラベル博士に出会う以前に、腰の椎間板ヘルニアの手術をしたが改善せず、続いて脊椎の固定手術を行なったが症状は一層悪化しました。
その後ケネディ大統領はトラベル博士の診療を受け、トリガーポイントブロックの治療と助言によって症状が顕著に改善され人生を変えることができたのです。ケネディ大統領はまさしく筋筋膜性疼痛症候群(MPS)であったのです。
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