歯ぎしり・噛み締めは全身の悲鳴!

「歯ぎしり・噛み締めの原因は?」
「歯ぎしり・噛み締めを治すことはできるのか?」と気にしておられる方も多いことでしょう。
歯ぎしり・噛み締めの原因と改善方法を筋筋膜の観点からご説明いたします。
また、その中で「歯ぎしり・噛み締め」「全身の悲鳴!」なのだという大事なお話をさせて頂きます。

1 歯ぎしり・噛み締めの原因?

ストレスによる咬筋等の緊張が、歯ぎしり・噛み締めの最も有力な原因とされています。
人が危険に直面すると歯を食いしばることからも解るように、ストレスによって咬筋等は緊張しますから、ストレスを軽減すれば咬筋等の緊張が緩和され歯ぎしり・噛み締めも改善する可能性はあります。
しかし、「ストレス」は誘因の一つに過ぎず、問題の本質は「咬筋等の緊張」そのものにあります。
例えば、就寝中に「ふくらはぎ」がつることがありますが、これはふくらはぎの筋肉である腓腹筋が異常に強く収縮することによって生じます。
そして、この筋肉の異常な収縮は、筋肉内に生じた「小さなしこり(トリガーポイント)」によって引き起こされることが証明されています。
就寝して脚を長く静止状態にしたり、脚を冷やしてしまうのもふくらはぎがつる要因とはなりますが、それらは誘因でしかなく本質的な原因はすでに筋肉の中に存在しているのです。
同じように、主に口を閉じる咬筋に「小さなしこり(トリガーポイント)」ができると噛み締めることになりますし、顎を横にずらせる内側翼突筋にできると歯ぎしり、顎関節を保っている外側翼突筋にできると顎関節症を引き起こすことになるのです。
歯ぎしり・噛み締めの根本的な原因が口腔内の筋肉であると認識することは、歯ぎしり・噛み締めの治療を考える上で極めて大切なことです。

2 歯ぎしり・噛み締めが歯痛や知覚過敏の原因になるのか?

歯ぎしり・噛み締めによって、歯根膜が炎症を起こし噛むと痛む、あるいは歯や歯茎がダメージを受けて歯が染みるとされています。
それも事実でしょうが、これらは歯ぎしり・噛み締めによる歯痛や知覚過敏の本質的な原因ではありません。
次項のイラストに示しますように、口の開閉に関わる「咬筋」・「内側翼突筋」・「側頭筋」等に生じた「小さなしこり(トリガーポイント)」は、歯ぎしり・噛み締めを起こすと同時に歯痛・歯茎の痛み・知覚過敏を引き起こすことが証明されており、世界的にはこれが常識となっています。
身体の各筋肉に生じた「小さなしこり(トリガーポイント)」が、身体の痛みやしびれを起こすのと全く同じ原理です。
つまり、咬筋等のトリガーポイントを治療すれば、歯ぎしり・噛み締めが改善されるとともに歯痛や知覚過敏も改善されることが多いということです。

     <歯ぎしり・噛み締めを起こすトリガーポイント>

1983年、米国のケネディ大統領とジョンソン大統領の主治医を勤めた痛み治療の世界的権威であるトラベル博士は、「トリガーポイント」による「筋筋膜性疼痛」が身体的な痛みの95%を占め残りの5%は「骨折」「ガン」「感染症」などによる痛みであることを突き止め『トリガーポイント・マニュアル(通称)』を発表しています。
このマニュアルには、歯ぎしり・噛み締め・歯痛・知覚過敏に関する優れた知見も含まれています

※ ×印はトリガーポイントの位置を示します。
トリガーポイントは「小さなしこり」であり、押圧すると痛みを生じます。
※ で示す範囲は、痛み・しびれ・知覚過敏を起こす範囲を示します。
全てが痛むこともあり一部のみが痛むこともあります。
※ 複数のタイプが重複して症状を起こしていることも少なくありません。

<咬筋>
・ 咀嚼筋の中で最もトリガーポイントが
 発生しやすい
・ 歯や歯茎に痛みを放散し、口を開け難い
・ 時に、顎関節症の痛み、知覚過敏、耳の
 奥の痛み、耳の閉感、耳鳴り、耳の内部の
 ひどい痒み
・ 噛みしめ、歯ぎしりの原因
・ 副鼻腔炎の誤診の原因

<内側翼突筋>
・ 口腔(舌・咽頭)・耳の深部・顎関節の
 痛み
、耳の閉塞感
・ 噛む・歯を食いしばる時に増強
 (歯には放散しない)
・ 口の裏側や硬口蓋・舌に痛み、嚥下困難
・ 口を大きく開けるのが難しい
・ 噛みしめ、歯ぎしりの原因

<側頭筋>
・ 歯は、痛みよりも熱や冷感による不快感
・ 物を噛んだときに上歯や顎に放散痛

3 歯ぎしり・噛み締めの改善

〇 歯ぎしり・噛み締めの根本的な原因は、口を開閉する筋肉内に生じた「小さなしこり(トリガーポイント)」にあるわけですから、改善するためには、まず筋肉内のトリガーポイントを取り除き筋肉を正常な状態に戻すことが必要になります。
咬筋等の緊張や嚙み合わせの異常は、心身のストレス性疾患にも繋がり得ますから、ストレスの解消等は咬筋等の手当てをした後のことと考えて頂く方が良いでしょう。

〇 歯ぎしり・噛み締めで悩んでおられる方の中には、同時に肩こり・頭痛・腰痛・不定愁訴等の全身的な症状でお困りの方も少なくないでしょう。
これには明確な理由があるのです。
口の開閉に関与する咬筋等の筋肉は、身体の最も深くを走る深前線と言われる筋膜ラインに属しており、これらの緊張は頭蓋骨・脊柱・仙骨・骨盤底等を通じて周辺の筋筋膜や内臓に影響を及ぼし、肩こり・頭痛・腰痛・不定愁訴等の根本原因になることが多いからです。
また、その逆に、全身性の根深い症状が深前線を通じて咬筋等を緊張させ、歯ぎしり・噛み締め・顎関節症等を起こさせていることも多く、その意味からは歯ぎしり・噛み締めは「全身の悲鳴!」であると言っても決して過言ではありません。

(参考)
「線維筋痛症(原因不明の全身性の激痛)の9割が顎関節症を併発しており、咬合不全の治療などで線維筋痛症が治る例も少なくない。」
          スガ歯科医院 院長 菅健一

全身的に不調のある方は、歯ぎしり・噛み締めがその根底にあるかも知れませんので、是非とも治療に心掛けて頂きたいと思います。

〇 咬筋等にトリガーポイントができる原因は、ガムや固く弾力のある食物の噛みすぎ、歯科治療で長時間口を大きく開けるなど様々です。頬や顎に痛みやだるさを生じるようなことを避けることもトリガーポイントの発生や悪化を防ぐことになります。
歯ぎしり・噛み締めから歯を保護するためにマウスピースを装着することがありますが、歯の保護のためには必要であっても、咬筋等を緊張させ歯ぎしり・噛み締めを悪化させる可能性も否定できません。
マウスピースを装着して、頬や顎の痛みやだるさを感じる方は、並行して咬筋等を早めに治療することをお勧めします。

〇 一部に咬筋等のマッサージを施す治療院等もありますが、咬筋等は過敏になりやすくマッサージによってほぐすのは施術者に余程の技術がない限りお勧めしません。
当院の「筋筋膜反射リリース」は、咬筋等の罹患部位に軽く触接しながら、これと連鎖を形成している首等の複数点を同時に柔らかく刺激することによって連鎖を解消し、トリガーポイントを自然に弛めて症状を改善することができます。
また、その過程では、症状の形成過程を解明し全身的な健康状態を把握することができますので、全身的な影響のある歯ぎしり・噛み締めには最適の治療法と言えます。

〇 余談になりますが、咬筋等の口腔の筋肉を治療して正常な状態にすると、顎周りのむくみが改善されるとともに表情筋の動きが円滑になり、顔が引き締まって「小顔」になったり、表情が豊かになって若く見える効果を現すことが多くありますし、これまでの臨床経験からは、長期的に全身の滞りが改善され、本来の意味で若い身体を取り戻していく効果があると感じています。




全身の悲鳴に耳を傾け、歯ぎしり・噛み締めを早めに改善して健康な身体を維持しましょう。

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