握力低下が治る理由

握力低下があると神経障害と診断されることが多いでしょう。しかし、神経障害によって握力が低下する場合には、手や前腕の筋肉が萎縮しますし、神経が正常に機能していないのですから腕や手に痛みを生じることはありません。
他方、筋肉にトリガーポイント(押圧すると鋭く痛む「しこり」)が生じると、脳は筋肉の障害を悪化させないように自動的に筋肉の働きを抑制します(筋性防御)。このため、握力に関連する筋肉にトリガーポイントが生じると、握力が低下し、また手が麻痺したと感じることになります。
トリガーポイントによって握力が低下している場合には、手や前腕の筋肉が萎縮することはありませんが、握力低下と同時に手や前腕などに痛みやしびれを起こすことが少なくありません。
下記には握力低下を起こす代表的なトリガーポイントと関連痛やしびれの生じる範囲を示していますが、症状の改善のためには、何よりも先にこれらのトリガーポイントを確認してみるのが賢明です。
まずは、次のイラストから、ご自身の症状や痛み・しびれの部位に似たものはないか、押圧すると鋭く痛む「しこり」はないか確認してみて下さい。

握力低下を起こすトリガーポイント

            凡例  ×:トリガーポイントの位置  赤色:関連痛・しびれの部位
                『Myofascial Pain Dysfunction The Trigger Point Manual』
                トリガーポイントは、押圧すると鋭い痛みを感じる小さな
                「しこり」であり、赤色の範囲に痛みやしびれを起こします。

斜角筋が起こす痛み・しびれ

<斜角筋>
・ 上半身の広範囲の痛みや痺れ等の
 異常な感覚の根本原因
・ 手の感覚異常(腕や手の痛み、
 腫れ、痺れ、チクチクした痛み、
 灼熱感)、物を落とす、握力低下

・ 握力低下の主因
・ 精神的な緊張
・ 朝起きたときの手背部(特に4指)
 の浮腫、こわばり
・ 肩関節と指関節の痛みはリウマチの
 誤診の原因

棘下筋が起こす痛み・しびれ

<棘下筋>
・ 肩前部の深部痛の主原因
・ 時に、上腕から前腕、手の母指側全体
 に痛みとしびれ
・ 背中に手を回せない、袖に腕が通しに
 くい
・ 時に、肩甲帯の疲労、握力低下、肩の
 運動性の減少、関連痛領域の多汗
・ 就寝時患側(時には背中)を下にして
 寝ることができない

母指内転筋・対立筋が起こす痛み・しびれ

<母指内転筋・母指対立筋>
・ 親指の付け根や指にかけて、ずきずきする痛み
・ 母指と指先間に力が入らない、握力の低下
・ バネ指に関連
・ 親指の動きが悪く、悪筆となる
・ 指先を使う細かい仕事が困難

長母指屈筋が起こす痛み・しびれ

<長母指屈筋>
・ 母指の末端部位における痛みと圧痛
・ 母指の動きが制限され、握力低下により
 文字を上手く書けない

総指伸筋・示指伸筋が起こす痛み・しびれ

<総指伸筋、示指伸筋>
・ 指甲側の痛みの主因、指先は痛まない
・ 指甲側が緊張して、指の屈曲が制限され握力
 低下

・ 中指の伸筋の障害は良く見られる
・ 手と指の痛み、こわばり、関節に触れた時の
 痛み
・ テニス肘(外側上顆痛)の原因の一つ

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