歯ぎしり・噛み締めの原因

歯ぎしり・噛み締めの最も有力な原因は、精神的ストレスとされることが多いようですが、「ストレス」は誘因の一つに過ぎず、根本的な原因は「咬筋(口を閉じる筋肉)等の緊張」そのものにあります。
例えば、就寝中に「ふくらはぎ」がつることがありますが、これはふくらはぎの筋肉に「小さなしこり(トリガーポイント)」が生じ異常に強く収縮することによって生じます。
同じように、口を閉じる咬筋にトリガーポイント(押圧すると鋭く痛む「しこり」)が生じると噛み締めることになりますし、顎を横にずらせる内側翼突筋にできると歯ぎしり、顎関節を保持している外側翼突筋にできると顎関節症を引き起こすことになるのです。
歯ぎしり・噛み締めの根本的な原因が口腔内の筋肉であると認識することは、歯ぎしり・噛み締めの治療を考える上で極めて大切なことです。

歯ぎしり・噛み締めを起こすトリガーポイント

 次のイラストの×印はトリガーポイントの位置を示しています。トリガーポイントは「小さなしこり」であり、押圧すると痛みを生じます。
これらのトリガーポイントは、歯ぎしり・噛み締めのほかに、赤で示す範囲の全て又は一部に歯痛、知覚過敏、歯茎の痛み、舌の痛み、歯が浮く感覚等 の症状を伴うことがあります。
これらの症状を伴う場合には、口腔内の障害が進行していることを示しています。
これらの症状は、関連する筋のトリガーポイント・セラピーによって改善することができますので、まずは、次のイラストから、ご自身の症状や痛み・しびれの部位に似たものはないか、押圧すると鋭く痛む「しこり」はないか確認してみて下さい。

            凡例  ×:トリガーポイントの位置  赤色:関連痛・しびれの部位
                『Myofascial Pain Dysfunction The Trigger Point Manual』
                トリガーポイントは、押圧すると鋭い痛みを感じる小さな
                「しこり」であり、赤色の範囲に痛みやしびれを起こします。

咬筋が起こす痛み・しびれ

<咬筋>
・ 咀嚼筋の中で最もトリガーポイントが
 発生しやすい
・ 歯や歯茎に痛みを放散し、口を開け難い
・ 時に、顎関節症の痛み、知覚過敏、耳の
 奥の痛み、耳の閉感、耳鳴り、耳の内部の
 ひどい痒み
・ 噛みしめ、歯ぎしりの原因
・ 副鼻腔炎の誤診の原因

内側翼突筋が起こす痛み・しびれ



<内側翼突筋>
・ 口腔(舌・咽頭)・耳の深部・顎関節の
 痛み、耳の閉塞感
・ 噛む・歯を食いしばる時に痛みが増強
 (歯には放散しない)
・ 口の裏側や硬口蓋・舌に痛み、嚥下困難
・ 口を大きく開けるのが難しい
・ 噛みしめ、歯ぎしりの原因

外側翼突筋が起こす痛み・しびれ


<外側翼突筋>
・ 顎関節の深部の痛み、耳鳴り
・ 鼻の分泌異常
・ 顎関節症、副鼻腔炎の誤診の原因
・ 顎関節の脱臼、亜脱臼、轢音
・ 不正咬合・咬合不調和

治療上の留意事項

〇 咬筋の緊張等は心身のストレスを生み出しますから、ストレスを気にする前にまずは咬筋等の手当てを優先して頂く方が良いでしょう。

 歯ぎしり・噛み締めで悩んでおられる方の中には、同時に肩こり・頭痛・腰痛・不定愁訴等の全身的な症状でお困りの方も少なくありません。
口の開閉に関与する咬筋等の筋肉は、身体の深部を走る筋膜ラインに属しており、これらの緊張は頭蓋骨・脊柱・仙骨・骨盤底等を通じて周辺の筋筋膜や内臓に影響を及ぼし、肩こり・頭痛・腰痛・不定愁訴等の根本原因になることが多いのです。
また、その逆に、全身性の根深い症状が深部の筋膜ラインを通じて咬筋等を緊張させ、歯ぎしり・噛み締め・顎関節症等を起こさせていることも多く、その意味からは歯ぎしり・噛み締めは「全身の悲鳴!」であると言っても決して過言ではありません。
全身的に不調のある方は、歯ぎしり・噛み締めがその根底にあるかも知れませんので、是非とも治療に心掛けて下さい。

〇 咬筋等にトリガーポイントができる原因は、ガムや固く弾力のある食物の噛みすぎ、歯科治療で長時間口を大きく開けるなど様々です。頬や顎に痛みやだるさを生じるようなことを避けることもトリガーポイントの発生や悪化を防ぐことになります。
歯ぎしり・噛み締めから歯を保護するためにマウスピースを装着することがありますが、歯の保護のためには必要であっても、咬筋等を緊張させ歯ぎしり・噛み締めを悪化させる可能性も否定できません。
マウスピースを装着して、頬や顎の痛みやだるさを感じる方は、並行して咬筋等を早めに治療することをお勧めします。

〇 一部に咬筋等のマッサージを施す治療院等もありますが、咬筋等は過敏になりやすくマッサージによってほぐすのは施術者に余程の技術がない限りお勧めしません。
当院の「筋筋膜反射リリース」は、咬筋等の罹患部位に軽く触接しながら、これと連鎖を形成している首等の複数点を同時に柔らかく刺激することによって連鎖を解消し、トリガーポイントを自然に弛めて症状を改善することができます。
また、その過程では、症状の形成過程を解明し全身的な健康状態を把握することができますので、全身的な影響のある歯ぎしり・噛み締めには最適の治療法と言えます。